書評『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(大西康之 著、新潮文庫)

dandeです。

 

今回は、大西康之 著『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮文庫、2019年)を取り上げます。

 

久々に一気読みしたノンフィクション。

 

今の日本に欠けている「熱」が、この本にはあると感じました。

 

 

  目次

 

 

【『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』】

 

 

ロケット・ササキ: ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正 (新潮文庫)

ロケット・ササキ: ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正 (新潮文庫)

 

 

 

シャープの専務・副社長を務めたエンジニアである佐々木正氏を題材としたノンフィクション。

 

単行本は、文庫本に先立ち、3年前に発売されていますが、佐々木正氏が2018年に逝去されたため、あとがきが加筆修正されているようです。

 

また、佐々木正氏を「恩人」と慕う孫正義氏(現・ソフトバンクグループ会長)も、巻末に文章を載せています。

 

 

【総評】

 

 

まず題材が良い。ドラマ性があり、引き込まれます。

 

それに加えて、文章も読みやすく、4時間ほどで読み切ってしまいました。

 

日本の大手電機・半導体各社や、アメリカ企業も軒並み登場し、色々なエピソードが盛り込まれた一冊。

当時を知らない世代の私にとっては、新鮮な内容が多かったです。

 

オススメです。

 

 

【印象に残ったところ】

 

 

・冒頭でいきなり無名時代のスティーブ・ジョブズ孫正義氏が登場。

 

・戦争下で軍部の指揮下に置かれ、兵器開発に携わる中で、科学者・技術者としての正しい道とは何か、に思い至る。

 

・電卓の小型化、低価格化に至るまでの数多くのエピソード

 

・「共創」の思想


(「わからなければ聞けばいい。持っていないなら借りればいい。逆に聞かれたら教えるべきだし、持っているものは与えるべきだ。人間、一人でできることなど高が知れている。技術の世界はみんなで共に創る『共創』が肝心だ」 本書P.129 より引用)

 

孫正義氏の「あとがき」

 

(「ドクター佐々木はそのLSIを電卓に採用し、激しい『電卓戦争』を勝ち抜いた。その動機は『会社のため』とか『日本のため』とかではなく『人類の進歩のため』という壮大なものです。テクノロジーは何のためにあるのか。『利益のため』じゃつまらない。やっぱりそこは『人々の幸せのため』じゃなきゃ、面白くないですよね。ドクター佐々木はそんなスケールの大きな考え方をする人でした。

翻って、今の日本の会社は、ただの”サラリーマン組織”になり、ハングリー精神や『新しい時代を作ってやろう』という気概がなくなっている気がします。言われたことをただやる真面目な人だけではダメなんですよ。

自分で勝手に考えて自分で勝手に情熱を燃やす。それが結果として人類のためになる。これこそが人間のすばらしさだと思うのです。情熱を燃やすのは起業家だけではありません。ドクター佐々木はサラリーマンでしたが、組織に縛られず、情熱を燃やし続けました。」 本書P.286~287より引用)

 

 

他にもジョブズとのエピソードなど、おもしろいと思ったシーンはありましたが、今回はこの辺で。

 

ではでは。