感想 『思考の整理学』(外山滋比古 著、ちくま文庫)

dandeです。

 

今回は、久々にして今年初めての読書記事。

 

 

  目次

 

 

【『思考の整理学』】

 

 

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)

 

 

 

昭和に発売された古い本ですが、いまだに大学生の入門書として読まれています。

私も2回ほど読みました。

 

もちろん社会人にとっても、示唆に富む内容です。

いま読み返しても十分通用する内容で、なかなか核心を突いていると思います。

 

最近は特に、このブログによる情報発信もしている都合上、思考を整理することの重要性を痛感する日々。

 

 

【主な内容】

 

 

本書全体を通じて論じられているのが、「思考」「整理」

タイトルのまんまですが、ここを様々な切り口で考察しています。

 

 

まず、「思考」について。

 

本書の冒頭では、「小中高の学校教育」と「大学の学問」の違いを、それぞれ「グライダー」と「飛行機」に例えています。

 

 グライダーと飛行機は遠くからみると、似ている。空を飛ぶのも同じで、グライダーが音もなく優雅に滑空しているさまは、飛行機よりもむしろ美しいくらいだ。ただ、悲しいかな、自力で飛ぶことができない。

 学校はグライダー人間の訓練所である。飛行機人間はつくらない。グライダーの練習に、エンジンのついた飛行機などがまじっていては迷惑する。危険だ。学校では、ひっぱられるままに、どこへでもついて行く従順さが尊重される。

(略)

グライダーとしては一流である学生が、卒業間際になって論文を書くことになる。これはこれまでの勉強とはいささか勝手が違う。何でも自由に自分の好きなことを書いてみよ、というのが論文である。グライダーは途方にくれる。突如としてこれまでとまるで違ったことを要求されても、できるわけがない。グライダーとして優秀な学生ほどあわてる。(本書 P.11~12より引用)

 

本書は、グライダーから飛行機となり、自力で飛べるようになるには何が必要かを説いています。

 

自力で飛ぶことが必要な理由として、グライダー能力に長けたコンピューターの登場を挙げています。

もうこの頃から言われていたんですね、コンピューターが人間の仕事を奪うという論調。

今でいえば、「AI 脅威論」にあたるのでしょうか。

 

 

本書でまず指摘されているのは、現代の学校が積極的に教えすぎるというもの。これは生徒の依存心を育て、受け身にするものであり、教育に失敗するといいます。

現代との対比として、昔に行われていた「漢文の素読を例に説明されています。難解な文を読ませ、生徒の疑問・関心を引き出す。なるほどと首肯せざるを得ません。

 

 

次に、「整理」について。

 

本書では、思考の整理に最も有効なのは「忘却」であると書かれています。

いかにうまく忘れるか、ということですね。

 

それを工場に例えて次のように述べています。

 

 だいいち、工場にやたらなものが入っていては作業効率が悪い。よけいなものは処分して広々としたスペースをとる必要がある。それかと言って、すべてのものをすててしまっては仕事にならない。整理が大事になる。

 倉庫にだって整理は欠かせないが、それはあるものを順序よく並べる整理である。それに対して、工場内の整理は、作業のじゃまになるものをとり除く整理である。

 この工場の整理に当ることをするのが、忘却である。人間の頭を倉庫として見れば、危険視される忘却だが、工場として能率をよくしようと思えば、どんどん忘れてやらなくてはいけない。

 そのことがいまの人間にはよくわかっていない。それで工場の中を倉庫のようにして喜んでいる人があらわれる。工場としても、倉庫としてもうまく機能しない頭を育ててしまいかねない。コンピューターには、こういう忘却ができないのである。コンピューターには倉庫に専念させ、人間の頭は、知的工場に重点をおくようにするのが、これからの方向でなくてはならない。

 それには、忘れることに対する偏見を改めなくてはならない。 (本書P.112 より引用)

 

たしかに、忘れてしまう=悪、という思考回路がすでにできてしまっている気がします。まずは、ここの偏見を取り除いていく必要があるようです。

 

他にも、本書では、アイデアはしばらく寝かせる必要があるとか、本ばかり読むのではなく現実の第一次的情報も大事にすべきということなど、いろいろ示唆に富む内容が書かれています。

 

一度、全編を通して読んでみてはいかがでしょうか。

読み終わるのにそこまで時間は食いませんし、損はしないと思います。

 

ではでは。