【『aurora arc』】
ついに、BUMP OF CHICKEN のアルバム『aurora arc』が発売されましたね。
今作『aurora arc』は、タイアップ曲が多く、すでにほとんどの収録曲が先行公開・配信されています。
過去作『orbital period』も、既出曲が割と多いアルバムでしたが、あちらは楽曲を絵本のストーリーで繋ぐという斬新な試みがされていました。
今回はそのようなものもなく、ある意味ただのシングル集ではないか、という声が出るのも致し方ない、と思っていました。
実際に、アルバムを通して聴くまでは。
【全体的な構成について】
『aurora arc』の収録曲は、次のとおりです。
1.aurora arc
2.月虹
3.Aurora
4.記念撮影
5.ジャングルジム
6.リボン
7.シリウス
8.アリア
9.話がしたいよ
10.アンサー
11.望遠のマーチ
12.Spica
13.新世界
14.流れ星の正体
楽曲がただ無造作に並べられているようにも見えますが、僕はこの並びには明確な意図があると感じました。
※ インタビュー記事をすべて見ているわけではないので、あくまで個人の感想として見てください。
アルバムの構成は、大きく5つに分けられます。
【aurora arc ~ Aurora】
自分と向き合い、奮闘する
【記念撮影 ~ ジャングルジム】
大人の視点で昔を振り返る
【リボン ~ シリウス】
目の前の大切なものがある今
【アリア ~ 話がしたいよ】
大切なものとの離別
【アンサー ~ Spica】
離別に対する答えを見つけ、未来へ
この中で、核といえる曲は「アンサー」でしょう。
後述しますが、他の楽曲にも「アンサー」の世界観が色濃く出ています。
『aurora arc』の特徴は、最近の作風と比べて、感情が前面に出ている点です。
ボーカルの声だけでなく、特にベースが感情を表現しており、頭で理解するより先に心を揺さぶられます。
BUMPは、その歌詞の芸術性の高さが大きな魅力であり、今も昔もそれは変わらないと思います。
BUMPの歌詞は、過去作『COSMONAUT』辺りから、過度な推敲をやめたとされており、具体的な描写が増えました。
特に、幼少期の実体験と思われる内容が増えたのが大きな変化であり、その後の歌詞世界にもそれは引き継がれています。
今作『aurora arc』を聴けば聴くほど、『COSMONAUT』の空気感を強く感じます。
上記の作風の変化と、恐らく無関係ではないはずです。
- アーティスト: BUMP OF CHICKEN
- 出版社/メーカー: トイズファクトリー
- 発売日: 2010/12/15
- メディア: CD
- 購入: 11人 クリック: 346回
- この商品を含むブログ (154件) を見る
次に、個々の楽曲について書いていきます。
【個々の楽曲の感想】
全14曲(隠しトラックは除く)の感想と、印象に残ったフレーズを。
【aurora arc】
インスト曲。かっこいい。
【月虹】
イントロから最後まで、サウンドがかっこいい一曲。
歌詞は、焦燥感が前面に出ていますね。
「あっただけの命が震えていた あなたひとりの呼吸のせいで」
【Aurora】
「アンサー」との歌詞の関連が際立つ一曲。
ラストサビの「ああ、なぜ、どうしてと繰り返して」の唄い方は、涙腺に来ますね。
「触れて確かめられたら 形と音をくれるよ」
【記念撮影】
全体を通して、盛り上がるサウンドではありませんが、後半のベース音には感情を大きく揺さぶられます。
ノスタルジックな歌詞も相まって、かなり好きな曲です。
「その昨日の下の 変わらない景色の中から ここまで繋がっている」
【ジャングルジム】
「ロストマン」の仮タイトル候補の一つとして「ジャングルジム」が挙げられていたことから、ファンの間では話題を呼んでいました。
ただ、歌詞の内容を見ると、仕事に向かう電車の中・昔遊んだ公園が描かれており、「透明飛行船」(『COSMONAUT』収録)における「鉄棒」のような、幼少期の思い出の象徴としてジャングルジムが書かれているだけのような気もします。
深読みすると、出だしの「ここまでおいでって言ったのが 遠い昔の事みたいだ」と「状況はどうだい 僕は僕に尋ねる」が似ている、とか言えてしまうのかもしれませんが。
「誰から見ても取るに足らない だからこそ誰にも言えない」
【リボン】
BUMPの4人のことを唄った特別な楽曲。
シンプルな音作りの「ジャングルジム」の後に置くことで、よりイントロが映えている気がします。
「嵐の中をどこまでも行くんだ 赤い星並べてどこまでも行くんだ」
【シリウス】
「月虹」と並んで、激しいサウンド。
歌詞は、いまだに理解しきれていません。
「やっと やっと 見つけたよ」
【アリア】
歌詞の世界観が「真っ赤な空を見ただろうか」に似てますよね、この曲。
始まりの歌詞がともに「ため息」(「あの日の些細なため息」・「ため息の訳を聞いてみても」)なのも偶然ではないんじゃないかと思っています。
カラオケで歌詞を見て、「何を言えなかった」の「を」に驚いたことを思い出しました。「も」から「を」に変えるこの表現すごいと思うんですけど、あまり取り上げられてない気がします。
テンポがBUMPの楽曲の中でも最速級なのが特徴で、ストリングスも素晴らしい。
デジタル配信のものと音が明らかに変わっているので、取り直しかと思ったのですが、Youtubeに上がっている公式PVと同じでした。アウトロどっかで聞いたことあると思ったのよ。
僕は、アルバムバージョンの方が好きですね。
「一度でも 心の奥が 繋がった気がしたよ」
【話がしたいよ】
名曲中の名曲。
昔のBUMPを思い出させる楽曲ながら、今のBUMPも取り込んでいます。
僕が『aurora arc』を「感情が前面に出ているアルバム」と書いた理由の6割は、この曲にあるといってもいいです。
【アンサー】
今のBUMPのモードの根幹は、この曲だと思います。
「話がしたいよ」の後にあることで、さらに歌詞の説得力が増しています。
最後の「あーーー」の直前のベース音が最高すぎる。
「だからもう離れない 二度ともう迷わない」
【望遠のマーチ】
とことん未来志向の一曲。
「アンサー」の後に続くと、歌詞の「いこうよ」がさらに響きますね。
「その声頼りに 探すから見つけてほしい」
【Spica】
「angel fall」(『COSMONAUT』収録)とかなり近い世界観の一曲。
ゴスペル風のコーラスアレンジは、「たまたま空き時間で鼻歌を唄っていたら思いのほか良かったので採用した」と、本人が雑誌インタビューで答えていた記憶があります。
あのアレンジあっての「Spica」だなと、今聴いても感じますね。
「手をとった時 その繋ぎ目が 僕の世界の真ん中になった」
【新世界】
アルバムの構成を考えた時に、この楽曲の位置付けだけが、どうにもしっくりきませんでした。
幸せオーラが、明るいサウンドからも感じられます。某キャンペーンへの提供曲なので、あまり深く考えない方がいいのかもしれないと思い、構成からは外しました。
「君と会った時 僕の今日までが意味を貰ったよ」
【流れ星の正体】
Youtubeで先行公開された弾き語りver. を聴きすぎたせいで、最初は違和感があったのですが、数回聞いてようやく慣れました。
最後の追加歌詞、いいですね。楽曲のメッセージが凝縮されています。
ここでいう「流れ星」は、「唄・曲」を指すと考えていいでしょう。
唄のことを、ボールや弓矢などのひとりひとりに直接届く物ではなく、空を見上げれば誰にでも見れる流れ星で例えたのは、さすがのひとこと。
どんなに自分の思いを伝えたくても、相手がそれを受け取れる状況ではなかったら届かない、という悲しい現実があります。
それを唄にしつつ、いつ必ず届く時がくると信じているのが、最後の「輝け」に集約されていますね。
「angel fall」には、「あなたに声を 声より唄を 唄から心を 心にあなたを」「消えない勇気を受け取ったよ 臆病なあなたから 確かに」という歌詞があります。
同じく『COSMONAUT』に収録されている「イノセント」にも、「誰の声か どうでもいい言葉と音符があるだけ ただ力になれるように 愛されなくとも 君の側に」という歌詞が。
これらが、「流れ星の正体」では、さらに具体的な形で唄われているように感じます。
「飛んでいけ 君の空まで 生まれた全ての力で輝け」