dandeです。
今回は、サイモン・シン著『暗号解読(上)』を取り上げます。
同氏の著書は、先日紹介した『フェルマーの最終定理』に続き、2冊目。
目次
【『暗号解読(上)』】
- 作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/06/28
- メディア: 文庫
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【総評】
暗号を作成する者と暗号を解読する者の戦いを描いた古典的名著。
暗号の歴史を紐解きつつ、読み物としても面白いです。
もし本書が再編集されるとしたら、暗号通貨(仮想通貨)について書かれそうな内容。
【上巻をざっくりまとめ】
『暗号解読(上)』の内容をざっくりまとめます。
暗号史を見る上で、テクノロジーの進歩は切っても切れない関係であることがよくわかりました。
古代中国・ギリシャで秘密通信として使われたのは、メッセージの存在そのものを物理的に隠す、伝令の髪の中にメッセージを隠したりするという初歩的なものでした。
これは、まさに「敵に見つかったら終わり」です。
それと並行して発展したのが「暗号」でした。
初期の暗号には、転置式暗号・換字式暗号の2種類があります。
前者は、文字そのものをスクランブルで入れ替えるというものです。文章が長くなればなるほど安全性も高まりますが、この方法はメッセージの復元が非常に難しく使い辛いという欠点があります。
対して、後者は、文字を別の文字に置き換えるというもので、誰しもが使ったことのある方法です。こちらは、事前に受信者に「置き換えのパターンを書いた一覧表」を渡しておけば、受信者はそれを見ながら暗号を復元できます。
この方法の欠点は、その一覧表が敵の手に渡ってしまった場合に、情報が筒抜けになることです。
その後、暗号として発展を続けたのは、後者の換字式暗号でした。
しかし、換字式暗号は、暗号解読者にその弱点を見破られます。
それは、文字の出現頻度を分析する頻度分析でした。
言語には、文法の都合上、出現頻度が極端に高い文字があるので、単純に文字を別の文字に入れ替えるだけではそれが浮かび上がってしまうのです。
ここから頻度分析に破られない暗号を作るために、換字式暗号はどんどん複雑になっていきましたが、とくに軍事通信では簡便さとスピードが必要とされたため、新たな暗号が求められるようになりました。
そして誕生したのが暗号機であり、さらには頻度分析をも克服したドイツ軍の暗号機・エニグマ機でした。
その不規則性から解読不可能と言われたエニグマ機も、ドイツの研究者の裏切り行為によるコードブックの流出をきっかけとして崩れていきます。
そしてエニグマ最大の弱点もまた人間ならではのものでした。
それは、「文字の置き換えの際には同じ文字・隣り合わせの文字は用いない」という一見正しそうな対応や、「毎日同じ時間に定型文書を送る(ドイツ軍の例では、毎朝8時きっかりにその日の天候などの情報をやり取りする)」という何気ない行動です。
決まったパターンがあるということは、頻度分析の入り込む余地があるということを意味するからです。
機械がいくら優秀であっても、人間の行動が暗号の盤石性を危うくしてしまう、というのがまた面白いですね。
こうして、エニグマ機が破られたところで、上巻は終わります。
続きは、下巻の記事にて。
ではでは。