dandeです。
今回は、読書記事になります。
目次
【『遅いインターネット』】
同じ内容が繰り返し記述され、やや冗長な印象を受けましたが、全体を通した主張・趣旨はわかりやすかったです。
【概要】
本書の中心は、インターネットの台頭、特にソーシャルメディアの台頭により、人々はどう変わったか、です。
テレビポピュリズムからソーシャルメディアによる「動員の革命」への移行が結局失敗に終わったことに触れ、「動員の革命」すらポピュリズムの一形態に過ぎないとします。
そして、気付いた時には既に手遅れだったと著者は言います。
いまこの国のインターネットは、ワイドショー/Twitter のタイムラインの潮目で善悪を判断する無党派層(愚民)と、20世紀的なイデオロギーに回帰し、ときにヘイトスピーチやフェイクニュースを拡散することで精神安定を図る左右の党派層(カルト)に二分されている。
まず前者はインターネットを、まるでワイドショーのコメンテーターのように週に一度、目立ちすぎた人間や失敗した人間をあげつらい、集団で石を投げつけることで自分たちはまともな、マジョリティの側であると安心するための道具に使っている。
対して後者は答えの見えない世界の複雑性から目を背け、世界を善悪で二分することで単純化し、不安から逃れようとしている。彼ら彼女らはときにヘイトスピーチやフェイクニュースを拡散することを正義と信じて疑わず、そのことでその安定した世界観を強化している。 (本書P.20 より引用)
この四半世紀のあいだに、人類の何割かは確実に発信することでより愚かになっている。少なくとも発信する能力を得ることで、その愚かさを表面化させている。この現実から、僕たちは目をそらすべきではない。何の知見もスキルもなく、ただ考えをダダ漏れさせることを手放しで礼賛できる時代は確実に終わった。 (本書P.190 より引用)
本書の根幹にある筆者の問題意識は、上記の文章におおよそ集約されているように思います。
そして問題解決の糸口として「遅いインターネット」を提案しています。
提案の具体的な内容に関しては実際に本書を手に取っていただければと思いますが、とっかかりの箇所だけ引用します。
ではどうするのか。現代において多くの人は日常的に、脊髄反射的に、大した思慮も検証もなく「書いて」しまう。ならば「読む」ことと同時に「書く」ことを始めるしかない。いや、より正確には訓練の起点は「書く」ことになるはずだ。まずはプラットフォームの促す脊髄反射的な発信ではない良質な発信を動機づけ、その過程で「書く」ためには「読む」ことが必要であることを認識させる。 (本書P.199 より引用)
そして、YESかNOでは割り切れない問題について、いかに問題設定をするかが重要だと言います。
【感想】
かく言う私も、今こうやってブログを書いていますが、どれだけの情報収集をして書いているのかと問われれば、自信を持った回答はできない状態です。
発信のためにかける時間(書く時間)と情報収集のためにかける時間(読む時間)のバランスが取れていないんですね。
情報収集には時間がかかります。特に、良質な情報の確保には。
本書の言うとおり、発信がこれだけ簡単にできてしまうからこそ、重要なことはしっかり情報の裏を取らないといけません。
情報の正しい集め方は知っておきましょう。
こう言うと、「情報の正しい集め方」ってなんだよ、って話になりそうですが、私も本書を読んで思ったのがここ。
本書には『Ingress』から『ポケモンGO』への進化とその葛藤について触れている箇所があります。
そこで言われているのが「Google的なアプローチは本質的にエリーティズムなのだ」(本書P.119 より引用)という点。
情報の収集のしかたを論ずる時点で、そういう情報に触れられるリテラシーの高い人を対象としてしまっていて、結局はGoogleと同じエリーティズムに陥る危険性を孕んでいるのではないかと思いました。
筆者の主張にはおおむね賛同しますが、この点だけはいまいち腑に落ちなかった。
そんな私が本書を読んで感じたのは、やはりソーシャルメディアのもたらした功罪。
つい先日も「ネット上の誹謗中傷」が大きな問題となりました。
発信側の責任がより大きく問われる時代になりつつあります。
だからこそ安易な発信は避け、根拠を持った発信がメインになるようにしていくべきだと思いますね。
ネット上の空気・環境がすぐに変わるとは思いませんが、一人一人が少しづつでも変わっていけば、良い方向に向かうかもしれません。
メディアの報道やネット上のフェイクニュースまがいの情報を鵜呑みにせず、良質な情報を収集し、自分で考えを整理した上で発信することを心掛ける。
王道だけど難しい。
そんな地道な努力を続けていく。
情報の飛び交うスピードはどんどん速くなっていきますが、それに惑わされず落ち着いたスローな思考を忘れないようにしたいものです。
ではでは。