感想『光』(三浦しをん 著、集英社文庫)

dandeです。

 

今回は、読書記事。

 

 

  目次

 

 

【『光』】

 

 

光 (集英社文庫)

光 (集英社文庫)

 

 

久々に小説でも読もうかなと思い、書店でぶらぶら探していた時にふと目に入って購入したもの。

特にあらすじも見ず、選んだ理由はなんとなくです。

 

三浦しをん氏の小説はこれまで『舟を編む』しか読んだことがありませんが、『光』は全く異なるテイストでした。

こちらは、いわばダークサイド。文庫版の表紙イラストもそれを象徴していますね。

 

文体はやや叙述的ですが読みやすく、先の読めないストーリーで、ページをめくる手は早かったです。

 

 

【感想】

 

 

読み終わった後の第一印象は「救いのないストーリー」

 

人間の悪い・醜い部分が前面に出た登場人物たち。

それは、僻みであったり妬みであったり蔑みであったりします。

 

共感できるキャラクターがほとんどいないので、主人公に感情移入しながら気持ちよく読み終えたい方にはおすすめできません。

 

 

本書のテーマは「暴力」でしょう。

 

「自身に向けられた暴力から逃れるために暴力を用いたとき、人は幸せになれるのか」という問題意識が根底にあるように感じました。

 

「暴力に暴力で返したものは、もう人間の世界にはいられないのかもしれない」(本書 P.239)

 

 もう、気づいていないふりはできない。この世界の残酷な法則に。

 罪の有無や言動の善悪に関係なく、暴力は必ず降りかかる。それに対抗する手段は、暴力しかない。道徳、法律、宗教、そんなものに救われるのを待つのはただの馬鹿だ。本当の意味でねじ伏せられ、痛めつけられた経験がないか、よっぽど鈍感か、勇気がないか、常識に飼い馴らされ諦めたか、どれかだ。

 (略)

 この世のどこにも安息の地はない。暴力によって損なわれるとは、そういうことだ。 (本書 P.265)

 

この辺りの記述は、文章に勢いがありました。

共感こそできないものの、誰しも一度は考えたことがあるのではないかと思われる内容で、改めてこの世の理不尽を考えさせられます。

 

そうした理不尽にどう立ち向かっていけばいいのか、主人公の取った行動・選択を踏まえて、私たち自身で考え直す良い機会になるのではないでしょうか。

 

本書を包む空気感は、終始暗いです。

そして読後感も、それなりに重いものでした。

 

タイトルの「光」とは何を指すのか。

考えさせられる作品です。

 

ではでは。